我が日常の裏・表

いろはす/芭蕉(Twitter:Irohasu1230)のTwitterに収まらない話

【感想】シノ鉄 広島公演

 10-NEN-SAI 計画、恐るべし―。

 

 

 

 シノダが単独で全国47都道府県を巡る弾き語りツアー、シノ鉄

 

 

 「君の町にも、シノダが来るかもね…」という、10-NEN-SAI 計画のトップバッター【01】を飾る企画です。最初発表された時には冗談かと思いました。メジャーで9年も活動している大御所が、ギター一本だけ携えて全国行脚をするなんて。
 私の地元、広島県には3月2日(土)に来てくれました。引越しもある程度済んでいたこと、ちょうど広島に滞在する用事があったことが幸いして、地元での参戦が叶っていたのでした。

 この日の思い出の発端は、昨年暮れの「HITORI-ESCAPE TOUR 2023 広島公演」に遡ります。

 

【「HITORI-ESCAPE TOUR 2023 広島公演」の感想はコチラ】

【感想】ヒトリエ HITORI-ESCAPE TOUR 2023 広島公演 - 我が日常の裏・表

 

 ヒトリエが広島公演を行っているライブハウス”SIX ONE LIVE”は,二つのステージを備えています。広々として本格的なライブフロア”STAR”と、こじんまりとしてラグジュアリーな設えの”MOON”。
 ヒトリエのライブはいわずもがなSTARで行われますが、去る広島公演のアンコールで、このような会話がなされていました。
「シノ鉄は隣のMOONなんですけど、すげぇラグジュアリーな部屋でさ」
「バラのカーペット敷いてあるよね」
 ”ラグジュアリー”という意味深な単語を残して、あの日はSTARを後にしたのでした。

 それから去ること数ヶ月。迎えたシノ鉄広島公演当日。
 まずは物販。普段と同様に”SIX ONE LIVE”の正面玄関を訪れたのですが、どうも様子がおかしい。何らかのアーティストの物販ブースが設えられているのですが、どうにもシノダのものではなさそう。会場から1歩引いて辺りを見回すと、会場側面の裏口に看板が立っていました。


 裏口のようなところから建物に入ると、視界の左側に唐突に物販ブースがありました。初見じゃ探せんて。

 それから数時間が飛んで、開場前の整列。さきほど裏口?からMOONに入ります。
 入口の黒いカーテンの向こうに広がっていたのは、床には薔薇柄のカーペット、天井にはシャンデリアという、マジでラグジュアリーな空間でした。そして何より驚いたのは、フロアに椅子がびっしり敷き詰められていること。


 ステージとフロアの距離も近かったです。ライブハウス然とした段差は無く、部屋の前方中央にシノダが座るのであろう椅子と、ギターや譜面台が準備されていたくらいの、シンプルなステージがありました。
 ドリンクブースは室内後方に。開演前にチケットを消化します。……ラインナップは普段と比べてアルコールの割合が高め。翠ジンソーダを注文しましたが、グラスで渡されてびっくり。

 「今日は有酸素運動とは違うぞ……!」とこの時になって実感しました。

 ステージ後方隅っこの空席に陣取りました。ステージの背後には真っ黒のカーテンが閉まっていて「ははーん、開演時間になるとあのカーテンが開いてシノダが登場するやつだな」と思いつつ、今か今かと開演を待ちました。


 そうして迎えた開演時間、照明が少し暗くなりました。ステージ奥のカーテンが開くかと思いきや、我々の入ってきた入口側のカーテンがオープン。見えたのは、歩きスマホをしながらこちらにぬすっと向かってくる人影。「そっちからくるんだ!!」思わず息を呑みました。

 シノダ登場。手始めに空間を弄ります。ステージには、ステージ以外にも高級そうな椅子が2脚並べられていました。とりあえず意味も無く座って拍手を浴びるシノダ。
 ひととおり座り尽くしたうえで、中央の椅子に腰かけ、”さっき楽屋で作った曲”からライブスタート。裏返りそうな高音で唄われた「偏執的に触り過ぎて」というワードが妙に耳に残っています。続いて『風、花』。弾き語りライブなので、シノダ独自のペースで曲が進んでいきました。速くなったり遅くなったり、衝動的で抒情的。続けて「全部が嫌になった時の処方箋」と言わんばかりに『Milk Tabletが演奏されました。ヒトリエのライブにおいて、この曲ではシノダはギターを弾かず、ハンドマイクを手に歌唱に徹します。だからこそこの曲にギターが添えられるのは新鮮でした。とはいえ、まくしたてるような歌詞なので、感情的な演奏が曲に噛み合っていました。さらに「リーダーの曲をやります」と、これまたハンドマイク楽曲のLovelessへ。これも意外な選曲でしたが、異常に迫力がありました。

 この辺りで最初のMC。名古屋に次いでステージとフロアの距離が近いだとか、室内のシャンデリアを活かしたいだとか、フロア背後上部にある巨大モニターをどうしようとか、MOONに関する他愛もない話でした。
「裕福な暮らしを象徴する大きな冷蔵庫、その中身を一晩にして食べつくしてしまった少女がいました。彼女は一心にこう口にしていました」からの『食べなくちゃ』は鬼気迫る演奏でした。 「食べなくちゃ」や「嫌い」のリフレインが強烈に耳にこびりついています。無性に不安になる歌い方でした……。続けて「お待たせしました!」と演奏されたのが『残像スティグマータ』。先日の”シノダVSヒトリエ”でヒトリエがカバーしたことによって話題になっていました。
 続いてシノダがフロアに問いかけます。「本日がお誕生日の方?」……いらっしゃいません。「近日中にお誕生日の方?」……2名いらっしゃいました。せっかくなのでステージ前方、さきほどシノダが意味も無く座った椅子にご招待。最前の女性も遅れて手を上げましたが後の祭り。「そういうこともある」とシノダに宥められていました。とはいえ、近日中にお誕生日の方が3名いたわけなので『しおひがり君お誕生日おめでとう』が演奏されました。3方向に首を振りながら。

 続いてリクエストタイム。フロアから口々に様々な曲の名前が上がります。譜面上に置いたファイルに挟んでいるのであろう無数のメモや楽譜をパラパラ捲ってみて、ヒットしたものがあったら採用される恰好。今回はヒトリエの曲から『tat』と、『koneko』『さよならにしのん』の3曲が採用されました。『tat』は何度か「はぁ??」と首を傾げながらリフを弾いていました。本人曰く、過去イチのグダりっぷり。『koneko』は18年ごろに書き下ろしたというもの。A4の紙にマジックで歌詞が書き殴ってあるのを見せてくださいました。『さよならにしのん』は、当時しおひがり氏と共に絡んでいたある女性配信者が活動を終了する際に書き下ろしたという楽曲だそうです。「西の少女が東へ旅立っていく」というサビの歌詞が印象的でした。当のにしのん氏は、今やVTuberとして人生で1番稼いでいるのだとか。

 ここから後半戦。「空調の効いた部屋でベッドにねっころがって延々SNSに興じる、それこそが1番」みたいな話からの『frappe』。男女2人暮らしの、妙にリアルな生活感。
 リーダーの曲から『伽藍如何前零番地』。すごい迫力でした。「注意しないと延々できてしまう」という弾き語り。”シノダVSヒトリエ”の際には、細心の注意を払って曲を削ったにもかかわらず、7分オーバーだったとか。
 続いて「飼い猫を残したという寂しさをはらんだまま電子の海に巣立っていった少女のお話」ということでNeon Beauty』。そういう背景があったんだ。終盤の「きっと似合うよ」はゼッパネを思い出しました。最後だけ「きっと似合っていたよ」になっていたのが印象深いです。

 終盤はシノダの音楽人生を振り返りながら3曲演奏されました。  
 まずは「ずっと音楽を辞めなかった」ということ。辞められなかったというか、辞めなかったというか。それは彼自身の執念が成した技か。とはいえヒトリエが4人だった時代は、作曲活動からも身を引いていたわけで。そんな当時でも、彼がヒトリエのライブで弾き語っていた楽曲が一つだけありました。『テノヒラ』です。タテライブでも聴いたな。
 続いて「定期的に俺の人生に土足に踏み入ってきて爆弾を落としていく男・イガラシ」の話。酔って電話をかけてきてひとりアトリエへの加入を打診された話、wowaka急逝後「お前が歌え」と譲られなかった話。そんな彼がヒトリエに対して初めて書き下ろした曲『イメージ』。いつかのライブ音源と比べて、さらに進化していました。冒頭の独唱パートはマイクすら通さない、ギターも弾かない正真正銘のアカペラ。そこからの盛り上がりは凄まじかったです。「海は見えるかい」の辺りは泣きましたね。
  最後は、「今後もこうやって音楽をやっていく人生が続いていくんだろうな」と思っているのだという彼の、現時点での1番良い曲ということで『undo』。アコギであの細かいのを弾いてくれるおかげでクオリティがダンチ。これのせいで冒頭の新曲の記憶が飛びました。


  アンコールのMCは短め。彼自身の心情の整理をつけるための『世界の終わり』。それから、ノリで決めた「リクエストにもあったしなぁ」と『Rebirthday』。弾き語りライブらしく、あっさりとアンコールが過ぎていきました。
 シノダという人間の、限りなく素に近いであろう部分を垣間見れたライブだった気がします。惜しくもサイン会まで参加することは叶いませんでしたが、シノダという人の良さを直に感じられたのは貴重な体験でした。

 またどこか予定があったら参戦したいな。とりあえず今は、HITORI-ESCAPE TOUR 2024の広島公演(7月)が待ち遠しいです。あとヤオーン(9月)も控えていますね。
 今回もここまでお読みいただき、ありがとうございました。