我が日常の裏・表

いろはす/芭蕉(Twitter:Irohasu1230)のTwitterに収まらない話

【感想】ヒトリエ Summer Flight Tour 2022 広島公演/「PHARMACY」

 全国ツアーの初回に参戦しました。

 

 つまり、ヒトリエの御仁がツアーのために鍛え上げた新曲たちと、ツアーのために構成されたセットリストを全国の誰よりも先に、真っ先に体感してきたということになります。

 新譜「PHARMACY」の新曲たちがライブではどう化けるのか、そしてそれらがどういう流れで繰り出されるのか、普段の公演でいうところの“前情報”が一切無い状態で開演を待つわけなので、会場に入ってからというもののこれまでの比じゃないくらいソワソワと緊張していました。今回は妹と一緒に参戦したんですが、妹は「Loveless」と「我楽多遊び」、僕は「リトルクライベイビー」がセットリストに入っていることをそれぞれ願ってやみませんでした。

 

 以下、ライブの感想(と新曲に関しては初めて聴いた時の印象)です。

 開演時刻の19時を回ったところでフロアが暗転。その刹那思い出しました。「PHARMACY」の曲順は、最近の彼らのライブを体験できるように構成されたということを。前半にバラードやポップな曲を入れ、後半に速い曲を畳みかけたという話です。思えば春先のHITORI-ESCAPE TOUR 2022もそうでした。わざわざそのことを明言したということは今回のセットリストは概ねアルバムの曲順通りということでしょうか……。

 

 SEは“いつもの”になりつつあった“シャン…シャシャン…”とドラム主体のものから変わっていました。「Neon Beauty」を彷彿とさせるシンセの音色が特徴的で、以前のものと比べると夏らしいかも。

 ステージにはシノダ、イガラシ、ゆーまおのお3方が登場。SEが止まって数秒、最初に聴こえたのは、

 

(1) Flashback, Francesca

 

でした。脳内を侵食するように繰り返される“Flashback, Francesca/タイトな夜”が否応なしに耳にこびりつく、「PHARMACY」の1曲目です。裏声に近い声色で囁くように歌うシノダ、ゆらゆらと揺れながら蠢くようなベースラインを正確なリズムでこなすイガラシ、コーラスもこなしながらビートを刻むゆーまお。彼らの演奏に合わせて、気が付けばフロアもゆらりふらり。水色のライトがこれまた幻想的で夢見心地のままにライブが幕を開けました。

 

大抵の問題が解決しないまま"君"が行った後、次に聴こえたのはBPM=140のバスドラムとピコンという音色。流石はライブを意識したアルバム「PHARMACY」のツアーです。

 

(2) ゲノゲノゲ

 

MVも作られた今作のキラーチューン。驚異的な中毒性です。ギターを弾きながら呪詛のようなフレーズを見事に歌い上げるシノダと、その後ろで暴れるように演奏するリズム隊。あのソロ回しはライブでは圧巻の一言に尽きます。一度イガラシにスポットライトが当たったかと思えば少しの休憩を挟んで今度はゆーまお。そしてシノダが少しギターをかき鳴らしてイガラシが沈めるあの感じ。最高。

“10、9,8から4まで飛んだらあんたもゲノゲノゲ”の最後のゲでステージに向かって右手の親指を下につき下ろした時のシノダのどや顔よ。

 

アルバム通りに流れるかと思って“透き通るよな”の一言を待っていると、聴こえてきたのは耳馴染みのないドラムソロ。そこにギターとベースが乗って来て、何となく知ってるリズムに。3曲目はまさかの

 

(3) ハイゲイン

 

今年だけで3回聴いてるのに3回ともイントロが違うから毎回新鮮に感動する。隣に妹がいるのも忘れて踊ったし泣いた。人間の本能に訴えるスピード感が好き。

 

冒頭3曲の後しばしMCが挟まれました。「今の気温が28℃なんだっけ?38℃くらいまで上げるからな」と啖呵を切るシノダ。その割に4曲目に演奏されたのは……

 

(4) 風、花

 

爽やか~~~~~。同じ夏でも冷房の効いた涼しい感じの曲~~~。サビで声が裏返るところが口ずさんでいて気持ち良いですよね。

大阪でも聴きましたけど、広島で聴くのもまた良い。幸か不幸か広島はステージが小さいので3人が近い距離で演奏することになり、3人を1つの視界に収めることができてお得かも。

 

(5) SLEEPWALK

 

ハンドマイク。途中シノダがイガラシの左肩に寄りかかって歌う一幕も。挙句正面から脅すように1音ボンと食らって追い返されていました。

 

(6) 電影回帰

 

新曲。ゆーまおがゆったりした曲を作ろうとしたらシノダが魔改造し、めちゃくちゃドラムが忙しくなって帰ってきたという逸話があります。そのドラムの忙しさ・激しさはライブだと本当に容赦がありませんでした。ライブの演奏って音源よりドラムの音が数段大きく聴こえるものですが、それがこの曲では顕著でした。

 

それからまた聴いたことのないイントロが。それでも音色とテンポから何となく察せられました。4人の時も、この前の大阪でも無機質な4カウントから始まったはずのあの曲に今になってアレンジが加えられるなんて!

 

 (7) イヴステッパー

 

「このツアーのライブ音源も売って欲しい……!!」IKIリリース時から時報と喩えられたイントロを聴きながらそう切に思いました。サビの歌詞が“広島 雑踏 刹那の夢”に変わっていたのがまた良かった。去年YUBIKIRIがやっていたことを、今年はイヴステッパーがやるという。(まぁヒトリエの曲で具体的な地名が歌詞に入ってるのこの2曲だし)これ聴けたの予想外だったし嬉しかったなぁ。

 

 予想外はさらに畳みかけます。続いてイガラシにスポットが当たってのベースソロ。スラップや指弾きとは違う、右手親指で弦を震えさせた後人差し指等でもフレットを抑えに行く、いわゆるハーモニクス?によるソロ。アコースティックな音色がフロアを覆います。IKIツアーのライブ音源を思い出し、「この曲も演奏してくれるのか・・・・・」と感慨に浸っていると、「間違えました」とシノダ。

 

 (8) 極夜灯

 

フロアからも一笑い。それから気を取り直して“世界から忘れられてしまうほど”と始まりました。今まで意識していませんでしたが、この曲も冒頭はギターボーカルの独唱でしたね。去年イメージで観たやつです。徐々にドラムやベースが乗って来て、“あたしはいけるかな”から全ての感情と爆音をぶつけられ、そのままギターソロに圧倒される、「極夜灯」でしか味わえない至福のひと時を満喫しました。最後は再びシノダ1人に戻るのがこの曲の儚さを際立たせます。

 

 (9) Neon Beauty

 

IKIモードになりつつあった脳味噌を引き戻す、ピコピコしたイントロ。蠢くようなベースラインの上でシンセサイザーが跳ね回る感じが気持ち良い。思わずサビで拳が上がる。Do you understand? を“ドューユーアンダースタン?”と表記したところにwowakaの魂が見えました。wowakaさんって歌詞に一切アルファベットを使わなかった方だったので。

 

MC。ここから後半戦とのこと。シノダ曰く、「さっき38℃まで上げるっつったけど、まだまだだな。まぁ極夜灯とNeon Beautyだと仕方ないか。こっから地獄を見せてやるからな」

その一言から間髪入れずに流れるパンザマストのような音色。元は「そういうコンセプトの曲じゃなかったでしょ」と思わず笑いつつ、来る垂直運動に対して心の準備を整えたのでした。

 

(10) カラノワレモノ

 

イントロで跳ね、Aメロで手拍子をし、Bメロから右手を上げる。そしてサビからまた跳ねる。それがライブにおけるカラノワレモノの聴き方らしいです。事前説明があったわけでもないのでしょうが、全国的にこの曲はこうやって楽しむものみたいです。僕も初めて行ったときは付いて行くのに必死で曲を聴くどころではなかったのを思い出します。それは隣にいた、ヒトリエのライブに初参戦した妹もそうだったみたいです。

最初こそ付いて行くのに必死になってしまいますけど、行き慣れてくるとこの一体感も含めて楽しめるようになってくるんですね。今回も良い汗かいた。

 

(11) Flight Simulator

 

「フライトシミュレーター!」とまるで必殺技のように曲名を叫ばれるや否や、歪んだギターの音色がテイクオフ。ヒトリエの十八番たる躍らせる音速ロックにフロアも右のこぶしで食らいつく。ツアーのタイトルの「Flight」はこの曲から取られていると思われるので、最初はこの曲にMVが付くんじゃないかと思っていました。(冷静に考えてみれば「踊るマネキン、唄う阿呆」と「Loveless」が反例でしたね)

灰色の積乱雲の中を休みなく飛んでいくような2分37秒の轟音。その行先は開放弦のスラップベースでした。

 

今思えば「Flight Simulator」→「飛行機」→「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」→「お客様の中に踊り足りてない方はいらっしゃいませんか?」→「踊るマネキン、唄う阿呆」なのか。うわー、アハ体験。

 

(12) 踊るマネキン、唄う阿呆

 

待ってました。もはやヒトリエのライブにおけるログインボーナスといっても過言ではありません。今回もがっつりとオンベェイスイガラシィを味わわせてもらいました。2番の“ケケケ、喧嘩ばかりしていたの”から繰り出されるライブ仕様のスラップ。あそこをステージのヘリに立って舌をペロリと覗かせながら弾かれるのが悪魔的で本当にかっこよかった。

 

終演後、妹が「うちが行ったジャニーズのライブだとペンライトを振るくらいだったけど、指でカウントするやつは初めてだった」と語ってくれました。2番の“そうやってつないだ声が言わんとしていた、ワン、ツー、スリー”のことでしょう。あそこで指でカウントを合わせて1拍溜めてサビに入るのが本当に気持ち良いですよね。

 

シノダ「3分29秒で決着をつけてやる」

 

(13) 3分29秒

 

最早定番となった曲です。「REAMP」の曲よりも先に3人になって最初に作られたらしいこの曲が、2ndアルバムである「PHARMACY」に収録されると聞いた時は違和感すら覚えましたが、ライブになったらそんなことは関係ありません。3分29秒の猛攻撃に喰らい付くのみです。やることは同じなので。

 

それからさらにシノダ氏、1人で声を張り上げて次の曲のサビの一節を歌い、「wowakaより愛を込めて」と。

 

(14) アンノウン・マザーグース

 

気が付けばwowaka本人が歌っていた期間よりシノダが歌っている期間の方が長くなりました。さらにサビでコーラスができなくなってからも久しいですね。サビでリズム隊2人が声を張り上げるところで胸が熱くなります。声の低い2人だからこそ叫んだ時に映える気がします。

 

「このツアーも初回ということで、今日ここでお客さんの前で演奏した曲もたくさんありました。こういう反応になるのかと、今後の参考にさせてもらいます」とのこと(一言一句正確に思い出せていないのはご容赦ください)。「あと3曲やって帰ろうと思います。」

(概ねアルバムの曲順通りのセットリストであと3曲ってことは……。)

 

(15) strawberry

 

初めて聴いた時、アルバムの10曲の中で一番真夏だと感じました。イントロのふにゃっとした雰囲気からもう舞台が南の島で、繰り返される"I know, Iknow/ねぇもう、いいの?"なんて浮き輪でプカプカ浮かびながら聞きたい。そういう気持ちが共鳴したのか、フロアもみな左右にゆらゆら揺れていました。"パーパーパパパパー"のコーラスはゆーまお氏が担当していました。ファンクラブ限定コンテンツにシノダさんが挙げて下さる楽曲に歌詞が付いたらこういう感じになるのでしょうか。

 

(16) Quit.

 

 先にこっちが来たか……。

 世の中有象無象玉石混交、様々な音楽作品が溢れかえっていますが、最初に聴いた時に全身にぞわっと鳥肌が立つほどの感動を覚える曲には中々巡り合えないものです。そうした世の中において、私にとって書いてくださる曲が毎度毎度自分の鳥肌をスタンディングオベーションしてくれる作曲家・アーティストに出会えるというのは本当に幸せなことでしょう。私にとって、そのアーティストこそがwowakaでした。wowaka亡き後、そのポジションをイガラシが取って代わってくれました。「REAMP」の時のインタビューにイガラシは曲の盛り上がりや展開を特に意識していたという発言がありましたが、私にとっての鳥肌はそこに関係している気がします。

 

それくらい、イガラシが描く曲はぞわぞわと感動させてくれます。「イメージ」の最後のサビの前の“そこからさぁ海は見えるかい?”なんて最初にMVのプレミア公開に立ち会った時には涙もこみ上げましたから。

 

その時の感動を再び与えてくれたのが、このタイミングで演奏された「Quit.」です。荘厳なピアノの音色に恨みやつらみをストレートにぶつける直情的な歌詞。サビの“スピードに魅せられて燃え尽きてしまえばいいさ”の“ピ”の爆発力が耳に残ります。最後に転調するところを耐えても「いなくとも」で声が一瞬だけ掠れたところでスタンディングオベーションです。

ライブではイガラシさんがコーラスを担当していました。砂浜の寄せては返す波のようなアウトロの名残惜しさが残るまま、マイクに向かってシノダさんが一言「ヒトリエより愛を込めて」

 

(17)ステレオジュブナイル

 

HITORI-ESCAPE TOURのときより主語が大きくなってない? 

と思ったのはさておき、最後は王道のロックチューンでお別れでした。「五月蠅い音しか出せないんだって」で螺旋を描くようにギターの音程が上がっていく3拍がすごく好きです。その勢いのままサビに向かっていくんだからちゃんと攻撃力を挙げた状態で大技をぶっ放すような爽快感があります。「こんなん聴いてくれんのお前だけ」というシノダさんの言葉にフロアも一体となって拳を上げて答えます。歌詞に唐突に出てくる33が、作曲時点でのwowakaの年齢なのではという説を見た時は驚きました。この曲が最後だと、遠い空に飛んでいく飛行機を見送るような爽やかなお別れみたいで、前向きに明日に向かえる気がしました。

 

さて、手拍子のお時間です。声が出せないから何となく手拍子だけで一定のリズムに合わせていくわけですけどこれがやっぱり難しい。福岡や大阪は揃うまでが早かったけど、広島はそうはいかず。ちょうど大学の授業で同期現象について勉強しているんですが、人間はそうはいかないんだなぁということを考えながら手拍子に参加していました。

 

アンコール。アンコールでも先陣を切って喋るのはシノダでした。つい2週間前までHITORI-ESCAEPE TOURが続いていたにもかかわらず、2週間で何とか演奏できる水準までこぎつけたことに胸を撫で下ろしていらっしゃいました。それからグッズの宣伝とホテルでの話へ。ついついマスクをつけたまま大浴場に行ってしまうようになったのはコロナ禍ならではの人間心理でしょう。それからゆーまおから新曲を演奏してみての話があり、何となくイガラシが話す雰囲気に。「グッズを作ってないのは喋らなくていい理由にならない」というシノダの発言に根負けしマイクの前へ。今回もゆーまおの逸話を話してくれました。ゆーまおはフロントの2人と比べて細身であるにも関わらず、2人よりたくさん食べるらしいのですが、食べ終わるのが遅いとのこと。だから2人でずっと待っているんだとか。和むわ~。男子大学生みたい。思わず吹き出すゆーまお。コーラス用のマイクで「みなさんも、よく噛んで食べましょう。消化に良いし」と弁解しておられました。シノダもそれを補足し、「それじゃアンコールをやらせてもらいます」

 

(18) curved edge

 

3人になってから作曲された曲もアンコールに回るくらい3人になってからの曲も増えたんだなぁとしみじみしながら頭を振っていました。今でも首にダメージが残っています。痛え。

 

(19) センスレス・ワンダー

 

ログインボーナス。やっぱりこの強烈なイントロを聴かないまま帰るわけにはいきません。wowakaのフレーズをイガラシが弾くことによりゴリゴリ感が増しています。最後の“どうしたいの? ねぇ、どうしたい?”が見るよりも聴くよりも脳に届く感じ。今日も良い汗をかいたなぁ。

 

この腕は明後日まで筋肉痛だろうな、そんなことを考えながらステージを去る3人を見送り、今日の公演は幕を閉じました。

初参戦だった妹も楽しんでくれたて良かったです。ファイナルは音源化されてくれないかな……。「イヴステッパー」がいつでも聴けるようになるまで死ねません。次に彼らのライブに参戦するのはいつになるのやら。その時には就職先が決まっていたらいいな。

 

ツアーはまだ始まったばかり。この記事を読んだ方がこの先のどこかの公演に足を運び、百聞を一見に変えて下されば幸いです。ありがとうございました。

 

追伸(広島のファーマシー猫です。かわいい)