我が日常の裏・表

いろはす/芭蕉(Twitter:Irohasu1230)のTwitterに収まらない話

【感想】ヒトリエ Summer Flight Tour 2022 東京公演

 スピードに魅せられた夏が終わります。

 我が家のキーホルダーたちが、扇風機の風に当てられてカラカラと音を立てる季節ともお別れですね。

 つい先日電撃的に告知された、ファイナル公演の生配信。(しかもアーカイブ付)

 広島在住で、ツアーの幕が上がった初演以外には金銭的・日程的な都合で足を運べなかった身としては、有難すぎるお知らせ。

 

 ちょうどブログを始めた結果か、全国各地のヒトリエファンの方々とTwitterでつながることが増えてきまして。広島以外の公演の感想も勿論追いかけていたんですが、どうやら各地を巡りネコの絵が世界に投下されるにつれて、彼らの演奏も進化しているらしいことを耳にしました。特に「Neon Beauty」のアウトロ。

 今回のSummer Flight tour。前回記事にした地元の広島が初演でした。シノダがMCでことあるごとに「この曲を客の前で演奏するとこういう反応が返ってくるんだな」と話していた通り、私は「PHARMCY」の楽曲の初期状態に立ち会いました。それはそれで十分貴重な体験でした。

【感想】ヒトリエ Summer Flight Tour 2022 広島公演/「PHARMACY」 - 我が日常の裏・表

 

 さて、前置きはこれくらいにして。9月22日。ファイナル。

 19時。私はZeppHanedaのフロアに座っているのではなく、自宅のソファに凭れて、ソーダ割のリキュールを呷っていました。部屋の照明もスマートフォンの電源も消し、アンコールを身体に注いでライブに向けてテンションを高めていきます。

 

 2カ月ぶりに耳にする、電子音なSEが流れ、メンバーの3人がステージに姿を現しました。SEが停止し、間髪入れず4カウントに導かれて「Flashback, Francesca」が繰り出されます。3人の演奏も観客の反応も眺めつつ、自分も1畳も無いソファに凭れて身体をゆらりふらり。眩い逆光で3人の表情が見えないことが却ってこの曲の浮遊する情景に合っていました。

 

シノダ「ファイナル始まりましたヒトリエですよろしくどうぞ! せい!!!」

 

 そして2曲目「ゲノゲノゲ」。こんな禍々しく暴力的に暴れたくなる曲を聴いて頭を振らないわけにはいかない。サビでの照明の点滅がえげつなかったです。瞬きほどの速さで会場の照明が激しく点滅しており、ブン殴られて縺れてHow?シュビドゥビドゥビダという感じ。(←馬鹿馬鹿しい)そんでもってシノダが音源とは違って素っ頓狂な声色にしたり巻き舌も駆使してハスキーに歌ったりしていたのがまた禍々しい。あと間奏のソロはカメラが切り替わって2人がそれぞれドアップになったのがカッコよかったですが、欲を言えば全編それでお願いしたかった。物足りない。

 最後のサビの「シュビドゥビドゥビダ」を経て我に返る感じが良いですよね。

 

 そして会場の熱量を押し上げんとする3曲目「ハイゲイン」。イントロのアレンジはAmplifiedと異なりリズム隊が主役です。これもライブ音源にならないかな……。ギターソロ⇒ドラムロールを経てラスサビに入るときの「バイバイする瞬間すら教えてくれないのさ神様」で真っ逆さまに落ちるジェスチャーに鳥肌が立つ。

 

シノダ「今日の東京が何度か、私は知りませんが。この会場の気温はいずれ3万9千℃に達するでしょう。ファイナルでございます。ツアーファイナルでございます。余すことなく楽しんでいってください。今日はよろしくお願いします」

 

 4曲目「風、花」。CD、アルバムでは木琴のような音色が主役を張っていましたが、全国を巡るうちにその木琴が鳴りを潜め、その分シノダのギターが目立つ仕様に育っていました。

 

 ハンドマイクで歩き回りながら歌う5曲目は「SLEEPWALK」。シノダ仕様で演奏された機会も多く、すっかり見慣れてしまいました。でもwowakaの曲を演奏してくれるありがたみをこの曲を通じて毎度毎度噛みしめています。思えば初めて3人でライブした「追悼会」からそうなんですが、歌詞の「世界」のところで一瞬シノダさんが歌わない(=wowakaのコーラスだけになる)という拘りが好きです。そして「うまぴょい伝説」かってくらいステージを縦横無尽に駆け回るシノダと、性格にグルーヴを刻み続けるリズム隊2人の対比が映像として面白いのも良いですよね。

 

 再びマイクをスタンドに挿して6曲目「電影回帰」。何度聴いてもサビのゆーまおの手さばきが凄い。歯を食いしばっているところまで配信だと見えてしまいました。あの日恋焦がれた1973を思い出してからのフィルイン?(にしてはだいぶ長尺)が反則。

 

 そして7曲目、大本命。BPM=140の耳慣れないカッティングのギターソロ。広島で初めて聴いたときには「これにこのタイミングで新しいアレンジがされるだなんて」とガッツポーズをしたのを覚えています。2度聴いたらもうこのソロも忘れられなくなりました。「イヴステッパー」です。この曲を生で3回聴けたのもう死んでもいいわ。だからこそ何度でも死ぬために音源化を切望します。「わっしょーい」

 

 続いて神聖な雰囲気を纏うベースソロを経て8曲目「極夜灯」エフェクターのおかげか、そのベースからハープのような音色が。イガラシのソロからシノダの弾き語り独唱へ滑らかにつながると、これほどまでに荘厳だとは。2人のエフェクターボードの操作が繊細だからこそ為せた音色は、是非とも資料として残すためにも音源化を熱望します。

 

 「極夜灯」の残響もそのままに9曲目Neon Beauty」。原曲及びそれをそのまま演奏した広島仕様でもこの曲は十二分に踊れるんですが、全国を巡る間に化けていたという前評判が真実であることを、そのアウトロで思い知らされました。「きっと似合うよ」を艶めかしさすら漂わせながら4回繰り返したのがずるい。挙句アウトロ後半の、ベースの大胆なスライドが印象的パートではシノダも負けじとギターで目立ちに来ていました。イガラシも全然知らないフレーズ弾いていてこれがまた悪魔的。それこそ「Loveless」を彷彿とさせるバトルが限られた尺の中で繰り広げられていました。かっこよすぎんか。

 

 ここまでで前半戦。MCの時間がとられました。

 自分が一番最初に汗でびちゃこいてることを自虐するシノダ。「ご覧ください2人の美麗なご尊顔を」。これに対してどこ吹く風なイガラシは顎に手を当てて観客の方を眺める。結局、汗かきなのはシノダの体質だという。まぁあれだけ声を張り上げていたら汗もかくでしょうよ。

 さて、改めてシノダより「ぶち上げていきます。皆さんも是非私のようになっていただきたい」という宣戦布告がなされました。

 

 10曲目「カラノワレモノ」。寂しげなパンザマストが流れる中「よっしゃいくぞ羽田!!!」と号令がかかる。ヒトリエ定番の垂直跳び曲。wowakaはそんなつもりでこの曲を書いたわけではないだろと内心で突っ込みつつ、ソファの上で飛び跳ねるわけにもいかないので首を前後させて演奏についていく。照明をwowakaのときのそれに合わせに行ったことが窺えました。青い光をバックに緑のレーザーが飛び交う、そこはかとない既視感。

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畳みかけるように歪んだギターの轟音が羽田に到来する。思えばあの演出も広島の時には無かったなぁ。11曲目「Flight Simulator」、続いて12曲目「踊るマネキン、唄う阿呆」。しっかり踊らせてもらいました。さらに13曲目「3分29秒」、14曲目「アンノウン・マザーグースまで、3人でできる十八番、さらにwowakaと育ててきた不朽の定番曲が立て続けに繰り出されました。イガラシとゆーまおのコーラスが今日も良い。

 「踊れ、今すぐ踊れ、そう」の1回詠唱される度に攻撃力が1段階上がる感じが好きです。「くだらねぇな」「思わねぇのよ」といった粗雑な言い回しはシノダならではですよね。

 「3分29秒」の間奏でカメラマンが中央で肩を並べて演奏する両翼に駆け寄る画角が新鮮でした。まるで戦場に突っ込んでいく86みたいな。そのカメラマンがそのまま中央真下で待機した結果か、「アンノウン・マザーグース」2番で3人を交互に見回すカットが入ったのがまた良い……。

 

 そして15曲目が「strawberry」。ビーチの情景が浮かぶ感じが、PHARMACYの10曲の中で一線を画して可愛い。緻密で高速な演奏を武器とするヒトリエらしからぬ脱力感。「わかんないの」を3人で息遣いも合わせてコーラスしてるのが1つの見どころですよね。

 

 MC。Zeppというヒトリエのキャリアにおいて最大規模の会場を抑え、そこでライブをしている現実にシノダさんが感極まる。その眼には涙すら浮かんでいるように見えました。爆雨の中10時間をかけて辿り着いた広島で7月に幕を開けたこのツアー。全国13か所14公演を経て、9月。東京に戻ってくる頃には季節もすっかり秋になっていました。終わりゆく夏に、新しく来る夏に捧げる曲として、16曲目「Quit.」へ。

 この曲は「イメージ」同様珍しくイガラシさんがコーラスを担当するんですが、その「スピードに魅せられて燃え尽きてしまえばいいさ」が最早ツインボーカルではというくらいに声を張っていたのが強く印象に残っています。

 

 そして最後17曲目。ヒトリエより愛を込めて「ステレオジュブナイル。「こんなん聴いてくれんのお前だけ」で締めてくれるのは、意味ではなく響きに重きを置いて言葉を選ぶwowakaより、汚かろうと同じだろうとひたすらに飾らない言葉を選ぶシノダらしいと思います。3人とも本当に楽しそうに演奏する曲ですこと……。アンノウン・マザーグースに次ぐ看板曲に育ってほしいと考えてんのは俺だけでしょうか。

 

 さて、アンコール。ライブTに着替えて手拍子に出迎えられる3人。シノダの右手には、「このねこが目に入らぬか」と言わんばかりに握られた、実体化したファーマシーねこが。「お前の右手に握られとるのは何ぞや、と。これはですね、ファーマシーねこの実体でございます」。

 イラストの時点で可愛かったのに、あれが3Dになるとか可愛くならないわけがない。ライブ翌日より通販で数量限定発売とのこと。ポラリス君を彷彿とさせる争奪戦になることが予想されました。(その予想は的中し、ファーマシーねこの実体の販売が開始されるや否やアーデリのサーバーが落ちました。数十分に亘る格闘の末何とか買えたのが幸いです。マジで嬉しい)

 今更なんですけど、この日のシノダさんのMCが、数日前のナンバーガールANNの影響でしょうか、全体的に向井秀徳っぽく聴こえた気がします。。

 

 それから12月2日に渋谷クラブクアトロにて「10年後のルームシック・ガールズエスケープ」なるメモリアルライブを行うことが告知されました。現在就活中の身なので、OB訪問や企業説明会など適当に予定を被せて参戦する算段です。追悼会以来の東京遠征です。

 それからゆーまおが地元凱旋ということで、その感謝や全国を巡った間奏を述べる一幕があり、最後にマイクの前に導かれたイガラシ。シノダに「喋り出す前に待つ奴を辞めてくれ」と当たる。両翼の喧嘩っぽいやり取りって良いですよね。思えば初めて見たCoyoteツアーのアンコールもそういう一幕あったなぁ。

 先程告知されたメモリアルライブに寄せて、イガラシが当時wowakaとバンドをやる、wowakaと曲を作っていることにすごくワクワクしたということを語ってくれました。あのアルバムってインディーズ版だから政策当時の裏話ってほとんど聞いたことが無い気がします。今だからこそそういう話が聞きたい。

 

 「思えば3月からずっとツアーやってる気がするよ」とこぼすシノダ氏。お陰様で私も3月からずっとヒトリエのライブに通う日々でした。それを受けてイガラシ氏。「そういえば、シノダがライブの前に毎回歌う曲があって、ふと今日でそれも最後だなって。別に嫌いじゃないけどめちゃくちゃ嬉しい」と。何の曲なんだろ。

 ぼちぼちそれぞれ持ち場へ。アンコールは3曲演奏されました。まずは「curved edge」。刺々しい赤のライトがステージを照らす。サビ及びその前後で一気に静かになるシノダ作の曲によくある、静かになるところで照明が白に切り替わって明るくなる演出が神々しさすら感じて好きです。

 それからシノダが前に出てきて一人で速弾きを披露。これがあったということはですよ。ぶっ刺さりました「インパーフェクション」。3人で出せる音数、音量じゃない。

 さらに「ポラリス」まで。3曲目は予想していませんでした。泣くって。もとは4人の曲を3人で演奏しているわけなので、通常よりは基本的に忙しなくなってるはずなんですけど、この曲は特に3人とも楽しそうに演奏なさる。サビでイガラシがマイクの前にこそ立たなかったものの明らかに歌っていたところ、それから最後の最後「誰もいない道を行け」の後でシノダとゆーまおが「Yeah」と叫ぶところ。配信だからこそわかるポラリスの醍醐味ですね。

 

 大満足。9月28日いっぱいまでアーカイブが残っているそうなのでまだまだ見返さなくては。それに、これは私の憶測めいた希望なんですけど、この公演もゆくゆくはライブ音源かライブ映像として発売されてくれるんだろうな……。(Amplifiedと被ってる曲も前口上やイントロを変えてきてたし、「センスレス・ワンダー」が演奏されなかったのがその伏線だと信じたいんですよね)楽しみだなぁ、この音源をウォークマンに入れて持ち歩ける日が。

 

 とりあえず、私の2ヶ月に1回ヒトリエのライブに参戦する生活もこれで一区切りとなりますね。次はいつになるのやら。目指すは12月2日。わざわざここまで読んでくれた人をリピーターにするためにも、ブログは途絶えさせないでそれなりに更新していきます。またぼちぼち観においでくださいまし。