(2022.04.03 "はてな"公開)
(2023.04.26 "はてな"修正&"note"公開)
4月になってしまいました。
昨日は自主ゼミを途中で抜け出して大学をうろついていると、
広大の広大なキャンパスを案内するキャンパスツアーの一団が目についたものでした。
ご入学、おめでとうございます。
大学では、高校までと違って、より自由に、
より自分の好きなことだけに偏って打ち込めるのがありがたいもので、
私は時折、用もなく図書館に足を運んでは
数学、もしくは数学教育のコーナーで面白そうな本を探していました。
大学の図書館って高校や公立の図書館の比じゃないくらいの量の蔵書があって
本当にテンションが上がります。
しかもその多くは街の大型書店でも扱ってないくらい古く、
時にはAmazonですら取り扱っていない書物に出会えるのが魅力です。
そこで今回は、刺さってくれる人が存在するかわかりませんが、
大学数学のイロハについて扱っている本について書き散らしていきます。
途中から読みたい本の話にすり替わっていますがご了承ください。
文句を付けたい方はどうぞコメントを残していってくださいませ。
1 矢野健太郎「公式集(モノグラフ 24)」
(出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4894281635/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_G74QEABPK5D304SSF63P)
中高6年分+α の内容がコンパクトにまとまっていて便利な"公式集"です。
中学生・高校生向けの本の風体をしていながら
「写像」や「解析」はおろか、「行列」や「群論」の話にも若干踏み込んでいる、
見た目によらないヤツです。
2 岡本和夫・長岡亮介「数学の森」
(出典:
https://www.amazon.co.jp/dp/4489022204/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_YEN28F8ZDC1Z8D1Q163F)
数年前、5月に10連休が錬成された時に読みました。
高校数学と大学数学の接続を意識した”読み物”で、
高校数学の「三角関数」や「ベクトル」の話に始まって、
「微積分」、「線形代数」のことが流れるように書いてあります。
当時とったノートを読み直したのですが、
線形代数に関しては「固有値・固有ベクトル」まで、
微積分に至っては「Greenの公式」や「微分方程式」にまで踏み込んでいました。
確か全体的に証明は控えめだったはずなので、
高校数学を超えたところで自分がどのような概念に出会うことになるのかを
ざっくりと把握することができるはずです。
私はこの本で賢そうな数式に出てくる「∂」の意味を知りました。
今読んだら当時ほど感動できないんだろうという気がします。
3 鈴木武ほか「理工系のための微分積分Ⅰ」「理工系のための微分積分Ⅱ」
(出典
Ⅰ:https://www.amazon.co.jp/dp/4753601838/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_V9Y3NFW9GBRXHQHPJTVH
Ⅱ:https://www.amazon.co.jp/dp/4753601838/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_V9Y3NFW9GBRXHQHPJTVH )
1~2年時の微積分の授業で教科書として指定されていた本でした。
故に私はこの本に従って、「実数の連続性」から、
1変数関数や多変数関数の「連続性」や「微分」、「(リーマン)積分」、
さらには「関数列の収束」、「陰関数定理」などを勉強してきたことになります。
全体を通して記述が丁寧かつ厳密であることに加えて
授業を担当してくださった先生方の説明が総じてわかりやすかったおかげで、
今日まで数学を勉強してくることができました。
「ベクトル解析」の記述も充実しており、
4年になってもこの本に助けられる場面が多々ありました。
今になって思えば演習問題も多く掲載されており心強いですね。
4 杉浦光夫「解析入門Ⅰ」「解析入門Ⅱ」「解析演習」
(出典
Ⅰ:https://www.amazon.co.jp/dp/4130620053/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_BB3DWWD64Q78B56SWQG5
大学1年生が右も左もわからないまま少人数のゼミに振り分けられ、
輪読を通じて大学における勉強の仕方を学ぶ授業”教養ゼミ”にて、
先生から「とりあえず買え。読めなくていいから本棚においておけ」
と言われて恐る恐る購入したものです。その先生が一番怖かった。
東京大学出版会の本だからか、
本棚に置いておくと何となく自分のステータスが上がった気がします。
この本に関してはしっかり読み込んでいくというより、
他の本で行き詰ったり、演習問題の類題を探したりした時の”辞書”
として活用することが多かったです。
先に挙げた「理工系のための微分積分」シリーズと違い、
こちらは後半では「複素解析」に紙幅が割かれています。
5 S.ラング「解析入門」「続解析入門」
(出典
解析入門:https://www.amazon.co.jp/dp/4000051512/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_R55K9DF7T2S08DBRSD9B
外国のお偉い先生の本の訳書です。
図書館で見つけて「解析入門」の方だけはパラパラ読んでいました。
ネックなのは外見のいかつさとその価格。(高い……)
高校生にも読めるように配慮されており、
高校数学の「数学Ⅱ」辺りの内容から緩やかに大学数学に飛翔しています。
大学生になってしばらくの内容は高校数学の厳密化ですが、
そのやり直しを避けようと思うなら、
「三角関数以降は大学の様式で教えるべきなのか?」
ということを齢19の私に考えさせてくれました。
高校時代に出会いたかった本の一つでもあります。
「続解析入門」は「ベクトル解析」について扱っているらしいです。読みたい。
6 松坂和夫「集合・位相入門」
(出典:
https://www.amazon.co.jp/dp/4000298712/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_9XANBXY5EXM11QJ5REWA
5のラング先生の本を翻訳した松坂先生の本です。
松坂先生は、「集合・位相」以外にも「線形代数」や「解析」などに至るまで
様々な大学数学の入門書を執筆しておられます。
「集合・位相入門」はその一冊という位置づけです。
「集合・位相入門」は、
この春に他学部から数学科に編入してくる友人も交えて自主ゼミで読み進めています。ユークリッド空間内での位相の話(=具体例)が充実しており、
2年のときよくわからなかった内容が今になって理解できた気がします。
ただ「連結性」や「位相」の定義が講義で習ったものと違い、
若干回りくどくて戸惑いました。
それでも最後には講義で出会った定理と同じものに辿り着けてしまうのが
数学の面白い所ですよね。
「関数解析」や「距離空間」の話にもつながるので、
まだまだこの本のお世話になる日々が続きそうです。
余談ですが、
「代数系入門」は「群論」の授業で教科書に指定されていたため購入しました。
「群」に続いて「環」や「加群」についても書かれていますが、
代数に関しては門外漢なのでよくわかりません。
時間が取れたら読んでみたいなぁと思っていたら2年が経ってしまいました。
7 伊原康隆「志学数学 -研究の諸段階 発表の工夫-」
(出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4621061593/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_HWPMAN2SS6WY4B50P38K )
数学とはどうやって学ぶのかということが記された"エッセイ"です。
学会でのエピソードや研究時のイロハが面白く、
読んでいて数学を勉強するモチベが上がる本でした。
8 結城浩「数学文章作法 基礎編」
(出典:
https://www.amazon.co.jp/dp/448009525X/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_77PMHJXPYZZ0TR1BRAF5 )
数学ガールの作者、結城先生による数学を用いた文章の指南書です。
文庫本サイズで、文章を執筆する際の注意点について書かれています。
数学者の文章だからか、
縦書きの文字列からでも内容の構造を把握しやすい気がしました。
9 福原満州雄「数学と日本語」
(出典:
https://www.amazon.co.jp/dp/4320013158/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_JSK9K14RVG82739A9RYE )
数学科の学生専用の図書室で見つけた本です。
Amazonでもほとんど取り扱われていません。
1980年代に書かれた本で、
・数学をする際に用いられる日本語がどのように整備されていったか、
・数学を表現する日本語の扱いを指導するうえで何に注意するべきか
というようなことが書いてあります。
最後の章が著者らの座談会の様子を記録したものになっているのですが、
・代数の「1倍」と人一倍の「1倍」の違い
・教育の早期化
(読んだ私は小・中学校受験の隆盛と進学校の超高速カリキュラムを連想しました)
について盛り上がっているシーンがあったのが面白かったです。
(出典:
https://www.amazon.co.jp/dp/4410152300/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_PQA8G8XPQKWNSVJVP194 )
高校生なら誰もが触れるチャート式の大学バージョンです。
大学院から数学科に来た他学部出身の友人がこれで数学を勉強していました。
チャート式の流儀に従ってページごとに命題が載っている形式。
数学書のセオリーを外しているようでいて外していない感じがします。
チャート式で大学院入試まで対策できる時代になったのはロマンがありますね。
11 江崎貴裕「データ分析のための数理モデル入門」
(出典:
https://www.amazon.co.jp/dp/4802612494/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_TBJ05GHGQB76FJ8R5RGH )
昨今話題の「数理モデリング」を"概観"した書籍です。
数式による説明以上に理論の広がりを"概観"することに主眼が置かれており、
大学1~2年生でも十二分に読み進めることができるでしょうし、
正直大学1~2年の時に読んでみたかったです。
(3年の時に発売されました。読んだのは4年時のGWです。)
「応用数学」に興味がある人は手元に置いておくと何かと便利でしょう。
姉妹書も2冊刊行されており、現在時間を縫って読み進めています。
12 竹山美宏「数学書の読みかた」
(出典:
https://www.amazon.co.jp/dp/4627082819/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_ZF11RNVDNYTPJZ2BHDWR )
しばらく積んでいましたが、時間が取れた折に一気に読めてしまいました。
数学科の学生としていつしか当たり前になってしまった無意識的な思考様式を
これでもかと言語化してくれているとんでもない本です。
数学にご縁の無い方は是非、紙とペンを用意して向き合ってほしい一冊。
13 「社会に最先端の数学が求められるワケ」
(出典
目次を読む感じ、応用数学について幅広く扱われているようなので興味があります。
「SIRモデル」や「トポロジカルデータ解析」についてもピックアップする辺り、
表紙のポップさの割にはガチな人向けの匂いがプンプンします。
以上です。
思いつくままに書き連ねていたら、
推敲のために遡るのもしんどいくらいの分量になっていました。
ここまで読んでくるのもさぞかし大変だったことでしょう。すみません。
しばらく真面目な数学の話は控えます。(ネタがないので)
次回は4月5日、1周回ってヒトリエの記事の予定です。ではまた。